2014年8月3日
先週の日経ビジネスのテーマ「電力暴騰」で、半世紀ぶりに原子力発電ゼロの夏を迎えた日本の状況についてのレポートがありました。
タイミングを同じくして、ブラジルの経済紙Valorが「Energia, Sob Pressão」(エネルギー、圧力の下)とする特集版を出しました。これは拡大し続ける電力需要と、今冬の降雨不足による渇水での影響に対する懸念を基に、2013年実績と2022年の予測を織り交ぜながらブラジルのエネルギーの将来を占う趣旨で、日経ビジネスの趣旨と似通った内容となっています。
この特集号の中に「Tensão em todas as fontes de energia(全エネルギー源に緊張あり)」という記事があり、エネルギー源別の供給量や用途別の使用量を比較した表が紹介されています。
非再生可能資源(化石系燃料資源)と再生可能資源に分けて表示されており、以下の様な内容です。
供給量(石油換算 千トン)
2013年(シェア) 2022年(シェア) 伸び率
石油 118,353 (38.5%) 158,782 (34.9%) +34.2%
天然ガス 35,055 (11.4%) 73,063 (16.0%) +108.4%
石炭 21,127 (6.9%) 28,229 (6.2%) +33.6%
核燃料 3,907 (1.3%) 6,859 (1.5%) +75.6%
非再生可能 計 178,441 (58.1%) 266,937 (58.6%) +49.6%
水力発電 42,947 (14.0%) 56,339 (12.4%) +31.2%
薪・木炭 25,151 (8.2%) 28,019 (6.2%) +10.1%
サトウキビ系 47,979 (15.6%) 80,437 (17.7%) +67.8%
その他 12,691 (4.1%) 23,568 (5.2%) +85.7%
再生可能 計 128,768 (41.9%) 188,362 (41.4%) +46.3%
合計 307,209 (100%) 455,299 (100%) +48.2%
因みに、このデータは単に電力だけでなく、燃料も含めた全エネルギーという設定になっています。
次は主な用途の表、但しエネルギー消費量ではなく、その製品の製造量が示されているので若干トリッキーです。(単位:千トン)
2013年 2022年
セメント 64,790 105,437
プラスチック 63,192 83,952
製鉄(粗鋼) 44,317 64,830
ボーキサイト 42,680 50,724
セルロース 16,672 28,689
紙 11,148 16,904
アルミナ 11,334 14,915
ブラジルの電力の約8割が水力発電によるものであることを前提に、上の資料を読み込むと水力エネルギーの全エネルギー中のシェアが現在で14%、将来は12.4%になるという予測に違和感を覚えます。
また、石油換算に置き換えた場合のサトウキビ関連エネルギー(直接・間接製造物のエタノールと、絞り滓であるバガスから得られる熱エネルギーの合計)が水力に匹敵するエネルギー量を提供していることに驚かされます。さらに日本では絶対入ってこない薪や木炭までがカウントされていることは新鮮な驚きであるとともに、太陽光や風力がその他でくくられていることも、日本との違いと考えられるでしょう。
この特集が伝えようとしているのも、如何にブラジルが再生可能エネルギーを増やしているか?というメッセージです。
ところで、いつもブラジルのコスト高を強調しているようですが、電力料金もその他コストと同様に割高で、ブラジル日本商工会議所の資料でも、日本とほぼ同等のコストであることが判ります。
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この電力を支える為に、既に三基の原子力発電所が稼働していることも、あまり知られざるブラジルの実力と言えるのではないでしょうか。
広島での原爆記念日を控え、日本では「核の平和利用」が叫ばれる季節ですが、実はブラジルは原子力潜水艦も建造中とのこと。
海底油田の警備が主目的とのことですが、デフォルト宣言した隣国アルゼンチンとは精神的に反目しあったまま。今後アルゼンチンの影響で経済が悪化したりすると、南米の緊張も一気に高まるかも知れません。
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