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執筆者の写真Kaz Suzurida

ブラジルの言葉 renúncia(ヘヌンシア)=放棄・辞任 英:resignation 西:dimisión

2016年3月19日

日本でも報道された通り、先週日曜は現政権に対する抗議の集会が全国各地で開かれ、警察側の発表で300万人が集まったとされています。(主催者発表はその倍以上、パウリスタ大通りだけで50万人)

で、今週は司直の手が伸びてきた前大統領のルラ氏を守るために、ジルマ大統領がルラ氏を官房長官として閣僚入りさせると言う必殺技を繰り出した為に、水曜夜から反対派がパウリスタ大通りのFIESP(サンパウロ産業協会)ビルの前でテントを張って道路を封鎖、ジルマ大統領のrenúncia辞任を要求する集会が再開しました。

このFIESPビルは通りを挟んで我が事務所の向かい側なので、我社もモロに影響を受ける場所なのですが、反政府派と言うのは中間層から富裕層で構成されていて、抗議行動も比較的穏やかで落ち着いており、身の危険を感じるような事は全くありませんでした。

📷真ん中の台形の建物がFIESPビル

しかし、この反対派による道路封鎖は金曜の朝出動した機動隊の催涙ガスと放水車による強制排除によって解かれました。既に小生は出社済みだったので、22階の執務場所から所謂高見の見物を決め込んだのですが、丁度催涙ガスが使われた8時半頃に出社してきて涙目になった同僚も居ました。

まあ、何があっても22階ですから、騒音の喧しさを我慢すれば催涙ガスの臭いすら漂っても来ませんので、業務には影響は無いのですが、午後になって今度は大統領罷免に反対する政府派が、直ぐ近くのMASP(サンパウロ美術館)前を封鎖して集会を開始、これは政府から各種補助金を貰って生計を立てている低所得者層が主体のグループで、騒音の出し方が反対派よりも過激で、我が事務所も午後3時で営業を終了すること羽目になりました。

それにしても、日本で言えば大手町から丸の内を抜ける外堀通り(名古屋で言えば広小路通り)のようなパウリスタ大通り一帯は、言ってみればブラジルで最も裕福なビジネス街であり、普段政府派タイプの大集団を目にすることは滅多に無いのですが、一体どこから来たのだろう?と不思議に思うほどの人数が集まってきており、与党PT労働党の動員力に驚かされることになりました。(パウリスタだけで9万5千人との発表)

で、司会者がサッカーの応援団の様に「オーレー、オレオレオレー」と歌って「ルーラー、ルーラー」と続けると、大衆が一緒に大合唱。立ち遅れているオリンピック施設の建設にもこのくらい息を合わせて頑張れれば時間内に完成するのでしょうが、それが出来ないのがブラジルの悲しいところ。そうした責任を放棄して、ルラ教のお祭り騒ぎを楽しんでいる様子です。


日本ではこうした集会が極めて危険なモノ、と報道されていると思いますが、実際にはこれだけの人数ですから、飲み物や食べ物の売り子や屋台が沢山出て、参加者も殆どピクニック気分と言うのが現場の雰囲気です。

📷

反対派が黄色と緑のブラジル国旗カラーで集まったのに対し、擁護派は赤。ベネズエラと同じく、社会主義を象徴する色で、これだけ赤い服が集まると、ここは何処だろう?カラカス?と錯覚を覚える週末でした。


それにしても集会が始まる直前まで、ブラジル人のスタッフ達ですらもパウリスタでの演説を招集したルラ氏を「アウェイの群衆の中でサイン会を開く敵チームのサッカー選手」に例えて、自分なら絶対にやらない、と言っていましたが、史上最大の規模の反政府デモが行われた直後に、同じ場所に登場して10万人近い支持者を軽々と集め、決して負けていないぞ、と世界のメディアを意識して果敢に示威行動を起こすルラ氏は、並の心臓の持ち主ではありません。


以前ベネズエラ国内では傲慢で鳴らした故チャベス大統領ですらルラ氏の前では借りてきた猫の様なふるまいをしている映像を見て、ルラ氏は凄いと思いましたが、今回その認識を新たにした次第です。

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