先週、パラグアイでもコロナ騒動が始まったことをお知らせしましたが、一旦防疫に関する施策が始まると、矢継ぎ早に隔離政策が打ち出されて些か戸惑う一週間となりました。
先ずはブラジル・ボリビア・アルゼンチンとの国境の移動制限を導入、16日月曜日から夜8時から朝4時までの外出自粛令が出され、Casi Toque de Queda(夜間外出禁止令ではないが、殆どそれに近い)との説明とともに、違反者には罰金(最高約70万円)や禁固刑が科されるとの通達が発せられました。
同時にツイッターで大統領自らが#Quedate en casa(家に留まってください)というメッセージを発信し、閣僚のみならず多くの人達が感染防止に協力して自宅に留まるようにとリツイートしました。
更に金曜日にはパラグアイでもコロナの死者が発生したことを受け、夜間だけであった外出禁止を3月21日から28日まで終日摘要とし、夜間外出の禁止も4月12日までは実施を続けるとの大統領令が発せられました。
外出禁止令が出た今日、拙宅周辺を歩いて状況確認をしました。(この程度の行動は制限されていません。)
クルマの量も普段ほどではないにせよ、一定数の交通量が認められましたが、店舗は完全に閉鎖されており、スーパーと薬局、ガソリンスタンドと併設の店舗、銀行のATMのみが運営されていました。昼のニュースを観ると、アスンシオン郊外で行われている検問では、行楽に向かうクルマが依然多く走っており、インタビューを受けた警察官は「大統領令の重要性をもっとしっかり認知して欲しい」と嘆いていましたが、ニュースの取材の間は逮捕者が出ている様子は見られませんでした。
昨日は一週間の籠城の為に近所のスーパーに買い出しに行きましたが、入店制限が行われていて、行列する人の間隔を1.2m以上空けるようにとの指示が出ていて、今まで見たことの無いユニークな行列風景を目にしました。
また、各店舗の入り口には臨時の手洗い場所が設けられ、検温を行った上改めてアルコールジェルで除菌した上で入店が許可されるという徹底ぶり。
コロナ患者が10名程度、死者1名と国際比較では少ないパラグアイですが、ここまで一気に防疫レベルが上がったのには、いくつかの理由があると思います。
先ず、パラグアイは150年前の三国戦争で成人男子の九割を失う大打撃をこうむった歴史があり、大勢の命をリスクに晒すパンデミックという言葉により敏感に反応する傾向があること。
次に、主要産業の一つに畜産業があり、過去の口蹄疫の発生で輸出先が限定される苦労が今でも続く(現在は予防接種の実施で口蹄疫は防がれている状態)だけに、謎の病原体ともいわれる新型ウィルスを蔓延させてはならないという強い合意があるであろうこと。
そして、700万人のパラグアイ人口の三割以上を占めるというイタリア系移民が、本国での原因不明且つ予想外の深刻化を目の当たりにして、この病気をパラグアイには絶対持ち込んではならないという固い決意があること、が挙げられます。
今日の言葉cuarentenaですが、本来は数字の40(cuarenta)が纏まった状態を表す言葉で、かつて欧州で疫病が流行った際に病人の隔離日数を40日としたことが語源となっています。
38年前に会社に入って米国からの燐鉱石の輸入担当になった時に最初に出会った難解な英語quarantineは、外国から日本に入った本船の衛生検査を行う検疫の事を指し、この作業に一定の時間を費やすことが島国日本の防疫上重要な役割を果たしていることを知りました。ダイヤモンドプリンセス号も横浜港停泊中はこのquarantineの状態に置かれていた訳です。本来は、Quarantine stationという検疫停泊係留場所は港の外にあって、外国から入港する船は必ずここで衛生状態の検査を受けることになっています。
また、Toque de Queda=夜間外出禁止令は、ベネズエラに住んでいた時に何度か経験したものの、政府に反感を持つ市民を押さえつける目的で発せられる禁止令とは異なり、市民を守るための発令であることから、随分緊張感の低い政令と感じます。
ただ、この状態が長続きすると、飲食業や製造業はじめ多くの産業で不都合が生じますので、疫病の爆発的感染が起こらないことが確認されたら、柔軟に対応して健全な経済活動を早期に再開させる方向に動いてほしいものと思います。
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