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執筆者の写真Kaz Suzurida

パラグアイの言葉 abigeo(アビヘオ)=家畜泥棒 英:cattle rustler 葡:ladrão de gado

今週18日から隣国アルゼンチン政府が牛肉の輸出を一か月停止することになりました。

アルゼンチンの通貨ペソは2019年8月にマクリ前大統領の政権継続が困難との観測が出た時点からほぼ直線的に下落し続けており、国内の物価上昇が続いてきました。これは同時にアルゼンチン産品の国際市場での競争力強化にもつながっています。


アルゼンチン人は、年間一人50㎏以上の牛肉を食べる世界有数の牛肉消費国。 https://www.daikokusengyu.co.jp/1253/ しかし、激増する中国の輸入牛肉の需要を満たす為に、アルゼンチンは自国向けの供給量を減らして、手取りの良い輸出向け、特に中国向けの輸出を急増させ、結果としてアルゼンチン国内の供給量が減り、価格が高騰して国民が満足する量や価格の牛肉が手に入らなくなって不満圧力が膨張していました。


この事態に呼応して、輸出を一か月止めて国内に出そうとしたのが今回の政策です。


しかし、昨年実績で80万トン以上の輸出があったものが、一か月でも止まるというのは、7万トン近い量が出なくなるということ。しかも、アルゼンチン牛肉の7割が中国向けでしたから、中国では今週から一か月、5万トンの牛肉が中国で足りなくなる事態を引き起こした訳です。

勿論、これに呼応してブラジルやウルグアイへの需要が増えますので、この両国にとっては美味しい話。でも、近年の中国の需要激増には両国とも輸出能力を増やして対応してきていましたから、容易にアルゼンチンの不足分を補える訳ではありません。


そこで発生するのが、中国と国交を持たないパラグアイ肉の横流し。

今日の言葉abigeo=家畜泥棒は、他の国では聴きなれない単語ですが、パラグアイの新聞には高頻度で出てくる言葉なのです。

今日のabc color紙でも、ブラジル国境に近いHorqueta市で家畜泥棒が検挙された事件を報じています。


肉の値段の安い南米諸国の中でも、パラグアイのコストの安さは抜きんでています。従って直近5年間の間にブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ等の富裕層がパラグアイ・チャコ地方の土地を買い漁って牧場にしていることは、これまでもお伝えしてきました。


また、パラグアイの大豆の最大の輸出相手が、同じ大豆の輸出国アルゼンチン・ブラジルであるというのは、隣国に輸出されたパラグアイ産大豆が原産地名を変えて、中国に輸出されていることの証左です。

しかし牛肉においては大豆よりは遥かに厳しい個体管理がされていますので、安易にパラグアイ産牛肉が隣国を通過して原産地を偽って中国に輸出される訳にはいきません。


そこで発生するのが、家畜泥棒ということになるわけです。

ブラジルやウルグアイが牛肉輸出に拍車をかけると、当然国内流通分が減りますから、これを補う為にパラグアイで盗まれた牛が隣国の市場に出回るという仕組み。


また、今回のアルゼンチンの輸出停止を受けて、中国政府も再びパラグアイ政府に対して「台湾と断交して中国と国交を結べば、長期的安定的にパラグアイの牛肉を買い付ける」という圧力をかけてきています。

経済政策の万年劣等生アルゼンチンの至らない政策の煽りを受けて、パラグアイは台湾との断交を迫られる危機を迎えている訳です。


ところで、最近まで大幅に米ドルに対して高値を維持していたパラグアイの通貨Guaraniがここに来て安値を付けるようになりました。


結果として今週はガソリン価格の上昇を招いたのですが、abc color紙に掲載された以下の記事を見て驚いたのは、過去10年間パラグアイではガソリンの価格がほぼ変わっていなかったという事実。


隣国からのガソリンの泥棒に関するニュースは目にしたことはありませんが、パラグアイの安定性や生産性に日本の皆さんももっと目を向けて頂けると良いと思います。

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