2010年10月15日
今週はワールドカップ以来久々に世界中の人々が同時にテレビに注目するイベントがありました。
そう、チリ北部コピアポ郊外のサンホセ銅鉱山の落盤事故現場の地下622mから33人の鉱夫達を救出する作業が中継されたもので、作業が始まった12日(火、祝日)深夜から、作業が終わった13日(水)夜までの24時間弱、CNN(英語版CNNIもスペイン語版CNNEも)をはじめとする殆ど全てのニュースチャンネルがこの中継一色となり、現場で最初から最後まで立ち会ったピニェラ大統領夫妻だけでなく、我がチャベス大統領も得意のトウィッターを駆使して激励や祝賀のメッセージを送り続けていました。
当然のことながら、今週の言葉は救出を意味するRescateということになるのですが、この言葉、件名にも書いてある通り、救出という意味だけでなく、身代金という意味もあるというのが非常にラテン的であると言えるのではないでしょうか。
救出に身代金と言うと、「誘拐」(Secuestro 英:Kidnapp)という単語が自然に連想されます。
2000年の映画「Proof of Life」では当時のコロンビアを舞台に仕立てたゲリラによる誘拐事件を描いた話(エクアドルで撮影されたもの)で、タイトルが示す通り、誘拐されたアメリカ人の身代金の交渉が物語の中心でした。
ベネズエラではこうした本格的(?)な誘拐は少なく、短時間誘拐(Secuestro Expreso)という誘拐が主流で、その模様を描いた映画「ベネズエラ・サバイバル」(原題:Secuestro Express)では、年間500件とも600件とも言われるこうした短時間誘拐の話がリアルに再現されています。
その手口は、武装したグループが狙いをつけた標的を銃等で脅してクルマに乗せ、被害者の自宅に乗り付けて鍵を開けさせ強盗を図るとか、銀行のキャッシュコーナーに連れて行って有り金を下ろさせるなど、さまざまで、目的を達した後は被害者を殺傷するケースから無傷で開放するケースまで、これまた様々なパターンがあるようです。
これまでも何度も書いてきた通り、治安の悪化がベネズエラ国民の最大の懸念事項ですが、今週の大統領の興味は、ロシアから原子力発電の技術を導入する見返りにドイツで所有していた製油所をロシアの会社に売り払う等、相変わらず国民の要望を満たすことに向いていなかったように思われます。
雨が降らないのが電力不足の原因と言い張っていた5月までとは完全に異なり、大雨に悩まされる最近でも停電の問題は解決しておらず、この電力問題の解消が急務であることは理解できますが、いきなり原子力発電を導入するよりも、送電網の整備を行うべき、というのが専門家の統一した見解です。
ともかく、今週はチリ鉱山の救出祝賀ムードで一週間が過ぎましたが、あまり政治家を刺激するような発言は差し控えることにしましょう。国家元首や政府高官を侮辱したと看做されると、それだけで有罪となって刑務所に入れられる(合法的誘拐?)法律が可決されたばかりですから。
チリの鉱山のニュースを探している中で、サンホセ鉱山の様な小型銅山の様子を示したホームページを見つけたので添付します。
金属鉱山というのは大規模なオープンピットを連想しがちですが、こうした小さく危険なヤマが南米にもまだ多く残っており、こうした処で作業する人達のご苦労の成果として、我々の豊かな生活が支えられていることを忘れてはならないという意味で、この鉱山事件も早く映画化されることを期待します。(既に作業は始まっているようです。)
尚、先週の内容で、Gran Colombiaを「大コロンビア帝国」と訳しましたが、「大コロンビア共和国」の間違いでした。改めてお詫びして訂正します。
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