2011年6月18日
米国に出かけると入国審査で要求されるのが、指紋の確認。小型スキャナーのようなもので、片手或いは両手の四本指と親指の指紋を検証されます。
ベネズエラでも、銀行での手続きやアパート賃借の契約等、法的書類が必要な際には必ず本人の署名に加えて指紋の押捺が必要になります。
今週は書類や小包などの運送を引き受けているクーリエの会社から通達があり、「今後の国際書類・小包の発送については、都度、発送人のcédula(セドラ=身分証明書)かパスポートのコピーと、Carta antidroga (麻薬取引非関与申告書)に本人の指紋を押捺するよう」指示がありました。
日本では'90年代までは「外国籍居住者に指紋を押捺させることが人権を蹂躙している」として問題になっていましたが、9.11事件のあった2001年秋以降は世界的にセキュリティの意識が高まり、指紋問題が取り沙汰されることはなくなってきたように思います。
一方、ベネズエラでは以前の駐在の'90年前後の時点で、あらゆる国民が指紋を押すことを義務付けていて、国民必携のcédulaにも本人指紋が記載されています。
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↑今のセドラ(左)と昔のセドラ(右)
麻薬取引の取り締まりについても、ベネズエラがコロンビア産麻薬の北米市場への仲介基地になっている、ということは随分前から指摘されており、'89年に上梓され、'94年に映画化されたトム・クランシーの「いま、そこにある危機(Clear and Present Danger)」でも、ベネズエラ人が仲介役として登場します。
一方、セドラは以前、本人照会の為の重要な役割を持っていて、これを偽造することは相当の技術を必要とする、ということが船戸与一の'89年の作品「伝説なき地」(ベネズエラを舞台にした冒険小説)でも描かれていますが、上の写真でお判りのように、デジタル技術の発達した今、誰のセドラも簡単に作ることが出来るようになってしまっています。
その上、以前はセドラを保護するラミネートのプラスチックに細かい彫り込みの入った高級な樹脂が使われていましたが、現在のラミネートはその辺の文房具屋や写真屋でも使っている一般的なプラスチックシートになってしまっているので、誰でも簡単に偽者身分証明書が作れるようになっています。
こうした世の中で、麻薬の取り締まりを強化するのは容易ではないでしょうが、これもベネズエラが直面する「いま、そこにある危機」であり、今週激化している刑務所の暴動なども含め、政府が直面する課題は電力不足だけでななく、大統領の不在が長引かないことを祈るばかりです。
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