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執筆者の写真Kaz Suzurida

ブラジルの言葉 vaiar(バイアール)=野次る、けなす  英:boo 西:abuchear

2015年10月24日

昨日23日からトカンチンス州の州都パルマスで「世界先住民族競技会」(Jogos Mundiais indígenas)が始まり、世界中から先住民族が集まってきています。

これは世界23か国の先住民族が一堂に会し、単に運動競技を競い合うのではなく、この機会にそれぞれが置かれた環境や政治的立場を話し合うことで、団結を示すと同時に先住民の権利を発信しようという意図もあるようです。

そして、こうした少数勢力を支持する姿勢を示すことで、社会的弱者の味方であることをPRしようと、開会式にジルマ大統領が出席し、開会の辞を述べたのですが、逆に会場は一時ブーイングの嵐となって大統領の式辞がさえぎられる程になったと、Folha紙は伝えています。

最初に「Dilma Rousseff é vaiada na abertura dos Jogos Mundiais indígenas」と言うこの見出しと写真を観た時に、ポル語の動詞Vaiarをスペイン語のBailarと勘違いして、開会式でジルマ大統領が原住民族と一緒に踊りを踊ったのだと思いました。上の写真で見る限り、大統領は行事を楽しんでいるように見えます。しかし、実際には自分のスピーチを野次とブーイングで遮られて不愉快な面持ちであったとの報道もありました。

実は今週、出張で首都ブラジリアから、このイベントが行われているトカンチンスまで出かけてきました。

特別行政区であるブラジリアは、ゴイアスという州の真ん中辺に位置しており、ゴイアス州の北側に接するのがトカンチンス州です。

ブラジリアからトカンチンスに通じる州道は全区間綺麗に舗装されていましたが、最近の少雨の所為ですっかり乾燥した台地はひからびて、至る所で自然発火の山火事が発生していました。

下はその風景を車中から写したものです。

📷

📷 この約500㎞になる道路を走り続けるバスの車中から眺めながら、これだけの辺境の地にも道路舗装を施し、不毛と言われたトカンチンスを新たな穀物生産の拠点に変えてきたブラジルの関係者の努力に改めて感動と感謝の念を抱いたのですが、上の開会式でもブーイングを止めたのは原住民族代表が「我々がここに来たのは誰かをけなすためではなく、むしろこうした場を設けてくれた政府に感謝しようではないか」と発言したことで、騒動は収まったそうです。

 "Aqui não é comício, índio não tem costume de vaiar. Nós respeitamos as autoridades"

これで大統領の表情に笑顔が戻ったのかも知れませんね。

とかく誰かが他人の欠点を探して非難し、それに多くが追随することが今の世の中の動きになっているように感じますが、このインディオ代表の様な流れを変える発想を持つ人物がどこの集団にも必要だと感じさせるニュースでした。

ところで23日はブラジルの女流芸術家Lygia Clarkの生誕95周年(88年に没)ということで、彼女が残した代表的作風である立体メビウスの輪をモチーフとしたGoogleのDoodleが表示されていました。

📷https://www.google.com.br/search?q=Lygia+Clark&hl=pt-BR&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0CIMBEIkeahUKEwi4gY2lsdjIAhXEPT4KHRH_Cas&biw=1366&bih=595 この時期ブラジルには日本の女流芸術家 大竹富江さんも活躍しており、むしろ一般の知名度では今年2月に101歳で亡くなった大竹さんの方が有名です。 http://ocula.com/artists/tomie-ohtake/?gclid=Cj0KEQjw2KyxBRCi2rK11NCDw6UBEiQAO-tljWTSJ55dE25ums_ECkDorQjbOiRTjlKFPE4-UZceyPAaAn2d8P8HAQ この芸術家たちの抽象作品は、それまえの常識では意味不明で、最初は非難の対象でしたでしょうが、こうした作品の芸術性を評価した人が居て、その声が徐々に広がった結果、作風は多くの人達に認められるようになったと思われます。 やはり、大勢と異なる文化をけなしたり非難したりするのでなく、違った文化を経緯を持って評価する姿勢こそが文明人の役目なのだと感じた一週間でした。

因みに世界的に有名なブラジル人建築家、Oscar Neimeyerの作品群として知られるブラジリアの建造物群ですが、1950年代としてはあまりに奇抜なデザインに、建設業者からはさんざん悪口をいわれた、とのことです。

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でも、こうした建造物、1960年代に小学生時代を過ごした小生には、社会科の教科書で「未来の建物が集まるブラジリア」と紹介されていたことで、それ以来ずっと憧れの地となていました。

今回のブラジリア初訪問はあこがれだった当時の日本にとっての先進国ブラジルが、現在置かれた厳しい現実を見つめ直す良い機会になりました。

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