2015年1月24日
昨年からずっとブラジル政界を揺るがしている国営石油会社ペトロブラスにまつわる汚職事件ですが、
捜査する警察の本件へのコード名がOperação Lava Jato(ラヴァ・ジャト作戦)と呼ばれており、毎日この単語が新聞に載らない日はありません。
何故Lava-Jatoと呼ばれるのか?周りのブラジル人に尋ねても納得のゆく答えを得られなかったので、
半年間疑問を抱えていました。
警察としては中央政府の悪事を綺麗に洗い流す、と言う意味で名づけた作戦だろうと思いますが、
国内最大のガソリンスタンド網を持つ同社の洗車サービス関連の事業から綻びが出たのが発端との
説もあり、未だに命名の理由は判然としません。
1953年に設立され、長らく南半球並びにラテンアメリカ最大の企業として君臨する同社ですが、同時に常に政界との癒着が問題視される企業でもあり、ブラジルでの汚職の歴史を代表する会社であるとも
言えます。
何故今になって汚職を取り上げたかと言うと、これまで半年、先進国並みに社会資本の充実した
サンパウロ州で生活していて、汚職の報道はピンと来なかったのですが、今週仕事で世界最大の
大豆生産地域であるMato Grosso州の州都Cuiabaを訪問した時に、汚職の実態を見せつけられた
為です。
Cuiabaの飛行場は以前も乗り換えで降り立ったことはあり、内陸の暑い土地柄で、ベネズエラの海岸
地方にあるBarcelona空港と同じように高い天井を持ち、冷房をかけずに熱気を籠らせない広い空間
構造の建物(屋根はテントのようなイメージ)に、いずこも同じ作りだ、と感心した記憶があります。
しかも、Barcelona空港と同じように、工事途中の作りかけという雰囲気があって、田舎の空港なら
こんなもん、と思い込んだ訳です。
今回は空港から出て街に向かったのですが、空港の外にある駐車場の向う側にEstação Aeroporto
(空港駅)と表示された建物が目に入り、何の駅だろうと不思議に思いました。
これが日本(38万㎢)の二倍以上(90万㎢)の面積を持つMT州の州都(人口は55万人)の玄関口に
始まる汚職のシンボル、VLT(Veículo Leve sobre Trilhos)=軽軌道鉄道の空港駅でした。
空港から市内に向かって走る道路の中央を鉄道の敷設工事が続いているのですが、空港に近い部分は既に電線も架けられていたものの、地面に線路は敷かれておらず、それが市内に向かうほど工事が遅れて、市街地に入る川を渡ると、むき出しの地面が放置されているだけで工事を行う様子すら見当たらないと言う有様でした。(平日でしたが、現場で働いている人も工機も見当たらず。)
元々このVLT、昨年6-7月に開催されたサッカーW杯の為に設置されることになっていたもので、当然
昨年前半には完成している筈のものが、全く完成の目途は立っていないと言う状況で、帰ってきて現地
の新聞報道を調べたところ、昨年末時点で72%の代金が支払われているものの、工事は半分しかできていないと書かれていますが、実際のイメージは全然できていないというものでした。
この写真に映っていつのは最も工事が進んだ部分で、実態は惨憺たるものです。
で、この状況をタクシーの運転手に聞いてみたところ、「所詮役所仕事はこんなもの。昨年末に交代
した前の州知事が全部持って行ったよ」と事も無げに答えていました。
ベネズエラでもカラカス市内の高架路線やバレンシア市の地下鉄等、道路を遮断して工事を始めた
ものの、その後の資金不足で中断となって街の中央に戦災の痕の様な姿が放置されている例はあり
ますが、ペルーでは公共工事が中断している様子は見たことが無かったので、やっぱり南米の東側の
いい加減さは同じだ、と感じ入った次第です。
GoogleでLava-Jatoを引いてみると、以下のようなイメージが得られます。
ペルーでもそうでしたが、南米では「洗車=ビキニのお姉さんの看板」というイメージが定着しています。
Lava-Jatoとは正確に英訳するとJet Washとなりますが、何とか今回こそは警察にジェット噴水の勢いでしっかりと汚職構造を洗い出してもらって、綺麗なイメージの国に変身してもらいたいものです。
ただ、隣国アルゼンチンでは今週クリスチーナ大統領の汚職を糾弾しようと証拠を揃えていた検事が
謎の死を遂げる事件が発生、メキシコでも市政に反対する学生43人を市長が地元マフィアに支持して
誘拐、皆殺しにして焼却・廃棄するという事件が昨年起きており、権力との対立には命懸けの覚悟が
必要な様です。また、一般国民も役所仕事に対する諦念を捨てて、払っている税金に見合ったサービス
を求めるようになるべきとも思いますが、まだまだ道のりは遠そうです。
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